地域への愛着を育む事業(H19~)

 

取り組みの概要

 この事業は、小・中学校9年間の学校で行われる「ふるさと学習」や「キャリア教育」を軸としています。事業実施の目的は、「地域の魅力発見」などの活動を通じ、子ども達の主体性や地域への愛着を育むことです。そのために、学校現場では教育課程の中で効果的に郷土学習を取り込み、保護者・地域団体の協力のもと、地域ぐるみで「生きる力」を育むことを目指しています。
 当初、子ども達は普段当たり前に生活している町について、その良さを聞かれても「何もない」と答えるなど、町の良さ・魅力を感じることのできる機会が少なかったようです。
 そのため学校現場では、子ども達に「生きる力」を育むことを目指し、主に総合的な学習の時間を活用し、効果的に郷土学習を取り入れています。保護者や地域団体の協力のもと、地域おこし協力隊がサポートに加わりながら、地域性あふれる様々な活動を行っています。学校と地域が連携し、地域総ぐるみで子ども達の学びをサポートすることが、子ども達の地域への愛着や「生きる力」の育成につながっていくのではないかと考えています。

 

取り組みの効果

 子ども達は、小・中学校の9年間を通し、農園活動や育てた作物を使った調理実習、町の文化や産業に触れる体験、町内魅力発見バスツアーや、町外でのまちのPR活動など、様々な学習活動を経験します。このような経験の場を町内の小・中学校と地域が連携して提供することによって、子ども達は町の人々に大切にされていることを感じ、自己肯定感を育むことにつながります。ふるさとの自然、文化、産業、そしてそこに携わる地域の人達にふれあいから、子ども達は町の様々な魅力を発見していきます。この取り組みの結果、実際に町が好きになり、将来町で働きたい、暮らしたいという子どもが増加したことが調査でわかりました。
 さらに、町内では平成26年度からコミュニティ・スクールが導入され、町内にある小・中学校が2つの「学園」として位置づけられました。各学園は、小・中学校9年間を見通した活動を展開することによって、これまで以上に活動の継続性、安定性を図り、組織としての機能を高めることができます。未来を見つめ、地域の特性を生かしたこれらの活動は今後も継続して行われていきます。
 子ども達に培われたまちへの愛着は、まちをさらに魅力的にしようという想いの提案などへとつながりながら、地域の一員であることを自覚する第一歩となっているようです。

 

地域の魅力の再発見

自分達が住んでいる浦幌の魅力を発見することを目的に、魅力発見バスツアーや川遊びなどの自然体験を実施。地域の団体の協力を得て、まちの魅力に触れる様々な機会を提供しています。

自信と誇りの芽生え

浦幌小学校と上浦幌中央小学校の6年生は、様々なプログラムで発見した浦幌の魅力を修学旅行先の札幌でPRして伝えることで、自分たちのまちへの誇りをより強いものにしています。

地域貢献への意識

教育プロジェクトによる授業を受けた子ども達の心に育ったのは、自分たちのまちを元気にしたいと想う純粋な気持ち。中学3年生では、締めくくりとして自分たちでまちを活性化させる企画を考え、行政や地域住民の前で発表。企画は町長に大切に手渡されます。

 

心から「ふるさと」を愛する人を育てる喜び

 「地域の良さも、農業の大切さも、仕事の魅力も他から押し付けられるのではなく、自分で感じてこそ本当に心に残る体験となる」これを、多くの人の力を合わせ9年間かけて子どもたちの心に育む、それが小中一貫CS上浦幌学園の教育の根底に流れる考えです。学校では、学校外から教えをいただいたり、学校外での体験学習は当然のように教師の仕事の範疇であり、範囲も発想も限られたものとなることがあります。浦幌町ではうらほろスタイルの推進により「ふるさと学習」や「キャリア(職業)教育」に関して「地域おこし協力隊」の強力なアシストを頂き、より広く、深く、継続した地域の協力をいただくことができ、子どもたちの学びとその推進は強く継続した流れになっています。学園(中学校)卒業後、早ければ3~5年で社会人として地域の力になる子どももいます。未来をたくましく生き抜く子どもの自己実現と生きる力の育成に不可欠な、生まれ育った地域における原体験を支えながら、この素晴らしい人材育成のサイクルに関わる使命感、それを上回る幸せと充実感を得ながら地域と学校が教育活動に取り組んでいます。

上浦幌中央小学校 校長 都鳥 秀史